現場のデータで、効果を確かめる。
導入効果を、現場条件をそろえて確認する省エネ効果解析手法。オンサイト空気エンタルピー法は、空調関連の省エネにおいて、導入した装置や改善施策の効果を、現場で取得した実測データをもとに確認するための解析手法です。
同じ条件で比べてはじめて、本当の効果がわかる。
既設の空調機器は、外気温、室温、人の出入り、室内の発熱、運転状況など、さまざまな環境変動の影響を受けます。そのため、導入前後の消費電力を単純に比較するだけでは、本当に省エネ効果が出たのかを正しく判断できない場合があります。
導入前後の消費電力をそのまま比較すると…
同じ空調機でも、環境条件が違えば消費電力は大きく変わります。電力が下がっていても、それが装置の効果なのか、外気温が低かったからなのか、判断できません。
外気温・内気温・熱源負荷の条件をそろえて比較する。
オンサイト空気エンタルピー法では、同じような運転状況のデータ同士を取り出して比較します。これにより、導入前と導入後を できるだけ公平な条件 で比較し、装置や改善施策の効果を確認します。
なぜ、単純な消費電力比較では不十分なのか。
空調機器の消費電力は、外部環境や室内環境によって大きく変動します。たとえば、次のような条件が変わると、同じ空調機でも消費電力は変わります。
- 外気温
- 内気温
- 室内の熱源
- 人の出入り
- 換気量
- 日射
- 営業時間
- 設備の稼働状況
- 機器の劣化状態
そのため、装置を導入する前と後で電力が下がっていたとしても、それが 装置の効果なのか、単に外気温が低かったからなのか、室内負荷が少なかったからなのか を切り分ける必要があります。
オンサイト空気エンタルピー法は、外乱条件をそろえたうえで、実測値を比較する という考え方を取ります。
オンサイト空気エンタルピー法の基本思想。
通常、空調機器の性能試験では、外気温や室温などの条件を管理した試験室、いわゆるチャンバーの中で評価を行います。しかし、既設の空調機器を実際の現場で評価する場合、試験室のように条件を完全にそろえることはできません。
条件をそろえた仮想チャンバーを構築
表計算ソフト上に、外気温・内気温・熱源負荷などの条件をそろえた仮想チャンバーを設計します。
実測データを格納
仮想チャンバーの中に、現場で取得した実際の測定データを格納します。
導入前と導入後を比較
同じような運転条件のデータ同士を取り出し、導入前と導入後を1対1で比較します。
現場の運転環境を維持したまま、同一条件に近い状態で効果確認
機器を止めず、業務を妨げず、外乱を排除した公平な比較を実現します。
比較に使う、5つの条件。
オンサイト空気エンタルピー法では、主に次の5つの要素をそろえて比較します。それぞれが、空調負荷・電力消費に影響する重要な変数です。
外気温
外気温は、空調機器の消費電力に大きく影響します。冷房時は外気温が高くなるほど負荷が増え、暖房時は外気温が低くなるほど負荷が増えます。導入前後を比較する際には、外気温の条件をそろえることが重要です。
内気温
室内温度も空調負荷に影響します。冷房時に室内温度を低く保とうとすれば負荷は大きくなり、暖房時も室内温度と外気温の差によって負荷が変化します。内気温の条件も比較に反映します。
熱源負荷
室内には、人、機械、照明、什器、冷凍冷蔵設備など、空調負荷に影響する熱源があります。人が多い時間帯や機械稼働時間帯は室内負荷が増えます。同じような負荷条件のデータ同士を比較します。
実稼働率
カタログ上の標準消費電力と、実際の現場での稼働状態には差があります。実測値と標準消費電力の関係から実稼働率を確認し、現場の運転実態に近い形で比較します。
劣化率・改善率
機器の経年劣化や、改善装置による圧縮機効率の変化も、必要に応じて解析に反映します。圧縮機COPや粘性解析を用いて、改善前後の劣化率を算出する考え方も取り入れます。
「あるべき電流値」を使って比較する。
オンサイト空気エンタルピー法では、メーカー公表の標準消費電力、外気温・内気温の気温感応度、熱源負荷率、実稼働率、劣化率などをもとに、各条件における あるべき電流値 を算出します。
これは、「その外気温・内気温・熱源負荷であれば、本来どの程度の電流値になるはずか」 を推定するための基準です。
そのうえで、実際に測定した電流値と比較し、導入前後でどのような変化があったかを確認します。
ここで重要なのは、メーカーの標準消費電力はあくまで 補正や基準づくりに使うもの であり、最終的な比較は 実測値によって行う ことです。
基本的な、比較の考え方。
オンサイト空気エンタルピー法では、効果の比較において次の3つの原則を重視します。
条件をそろえる
外気温、内気温、熱源負荷などをもとに、同じような運転条件のデータだけを比較対象にします。条件が違うデータ同士を比較しないことが、検証の出発点です。
1対1で比較する
装置導入前と導入後で、条件が近いデータを一対にして比較します。たとえば、「外気温10℃、内気温24℃、熱源負荷率が近い状態」の導入前データと導入後データを比較します。
実測値で判断する
標準消費電力やメーカー公表値は、基準づくりや補正のために活用します。ただし、最終的な比較計算は、実際に測定した電流値・電力値 をもとに行います。
実務上の進め方。
オンサイト空気エンタルピー法は次の流れで進めます。1分ごとの電流値を1時間単位に集計し、外気温・内気温データと合わせ、「あるべき電流値」テーブルを作成して比較します。
1分ごとの電流値を1時間ごとに集計する
まず、空調機器や対象設備の電流値をロギングします。1分ごとの電流値を取得している場合は、それを1時間ごとに集計し、時間ごとの運転状態や消費傾向を確認できるようにします。
外気温データを取得する
気象庁などから対象地域の外気温データを取得します。外気温は空調負荷に大きく影響するため、導入前後の比較には欠かせないデータです。取得した外気温データは、電流値の時刻とずれないように合わせます。
電流値データと外気温データを合わせる
1時間ごとの電流値データに、同じ日時の外気温データを紐づけます。このとき、日時のズレがあると比較結果に影響するため、時刻合わせが重要です。
内気温データを合わせる
室内温度のデータを加えます。内気温は1時間合計ではなく、1時間平均データとして扱います。これにより、日時/1時間合計電流値/外気温/内気温を持つ実測データが完成します。
「あるべき電流値」テーブルを作成する
空調機の標準消費電力をもとに、外気温の気温感応度、内気温の気温感応度、熱源負荷率、実稼働率、劣化率などを反映した「あるべき電流値」テーブルを作成します。冷房・暖房を間違えないように注意します。
導入前後のデータを1対1で比較する
仮想チャンバー上で、条件が近い導入前データと導入後データを比較します。比較するのは単純な平均値ではなく、外気温・内気温・熱源負荷などの条件が近いデータ同士です。これにより、環境条件の違いによる影響を抑えながら、導入装置や改善施策の効果を確認します。
こんな場面で使えます。
オンサイト空気エンタルピー法は、効果検証が必要な様々な場面で活用できます。
- 空調機器に設置した 省エネ装置の効果 を確認したいとき
- 空調機器の 入れ替え前後 で省エネ効果を比較したいとき
- 導入前後の効果を 顧客や社内 にわかりやすく説明したいとき
- POC結果を数値 で示したいとき
- ESCO型・成果連動型提案 の根拠を作りたいとき
- 補助金活用 前後の効果説明に使いたいとき
手法のメリット。
試験室の代わりに表計算ソフト上に仮想チャンバーを構築するこの手法には、現場で実用するうえで5つの利点があります。
実際の稼働状況に即した評価
試験室ではなく、実際の現場で取得したデータをもとに評価します。リアルな運用環境での効果を確認できます。
専用試験室がなくても比較できる
熱量計室のような専用試験室がなくても、表計算ソフト上に仮想チャンバーを構築し、条件をそろえた比較が可能です。
外乱条件を考慮できる
外気温、内気温、熱源負荷などの影響を整理し、より公平な比較を目指せます。
実測値で効果を説明できる
最終的な比較は実測値をもとに行うため、導入効果を説得力をもって説明できます。
グラフ・表で直感的に伝えやすい
解析結果をグラフや表にすることで、顧客や社内関係者にもわかりやすく伝えられます。
評価時に注意すべきこと。
オンサイト空気エンタルピー法は、現場で使いやすい効果確認手法ですが、評価時には次のような点に注意が必要です。
日時データの整合性
電流値、外気温、内気温の日時がずれていると、比較結果に影響します。
冷房・暖房条件の取り違え
冷房時と暖房時では標準消費電力や基本温度条件が異なります。冷房・暖房の区分を正しく扱う必要があります。
測定期間の妥当性
短期間のデータだけでは天候や運用の影響を受けやすくなります。可能であれば複数日・複数条件で確認します。
室内負荷の変動
人の出入り、機械の稼働、照明、什器、換気などの室内負荷が変動すると、空調負荷も変わります。
実測値の品質
電流値や温湿度データの欠損、センサー位置のズレ、ロギング間隔の違いに注意が必要です。
最終判断は実測値で
メーカー公表値や標準消費電力は基準・補正のために使い、最終的な比較は現場で取得した実測値をもとに行います。
HVA/HEEMスコアとエンタルピー法の関係。
オンサイト空気エンタルピー法は、HVA/HEEMスコアを支える効果確認手法のひとつです。HVA・HEEMスコア・エンタルピー法は、それぞれ異なる役割を持ちながら連携します。
エンタルピー法は、外気温・内気温・熱源負荷などの外乱条件をそろえたうえで実測値を比較することにより、HVAやHEEMスコアの根拠を補強します。
エンタルピー法で目指すこと。
オンサイト空気エンタルピー法が目指すのは、空調関連の省エネを「効いた気がする」では終わらせないことです。
この流れにより、空調関連の省エネは、より客観性と説明力のある取り組みになります。導入効果を、現場条件をそろえて確認する。それが、オンサイト空気エンタルピー法の役割です。
まずは、効果確認の設計から。
空調関連の省エネでは、装置や改善策を導入する前に、どのように効果を確認するかを設計しておくことが重要です。導入前のデータを取得し、導入後のデータと比較できる状態を作っておくことで、効果説明の精度が高まります。
GEPAでは、HEEMの考え方に基づき、現場のロス分類、改善策の設計、HVA/HEEMスコア、オンサイト空気エンタルピー法を組み合わせながら、空調関連の省エネを進めます。
